● ヨーロッパの伝統的なホールでの演奏会
  〜 この事業をはじめた理由 〜


(株)ミツマ・ミュージックプロダクツ事業部 創設者 
                        医学博士 宮原勅治  

ーロッパの町は、その中心部にたいてい広場があり、休日ともなると、そこには朝市や露店が並び、人々が集まる。広場の石畳に跳ね返る馬の蹄の音、教会の壁に反射する人々の話し声や笑い声が響きあい、一種の音楽的な和音のように聞こえてくる。時折、時刻を告げるのは教会の鐘であり、その教会から漏れ聞こえるパイプオルガンの音や聖歌隊の歌声も、美しい響きとなって周囲を包み込む。そこに住む人々は、赤ん坊の頃から日常の響きの中に暮らし、和音的な感性がはぐくまれてきたに違いない。西洋の音楽は、こうした和音の響きの中から生まれてきた。日本の畳の住居のような響きのない空間から育つものとは幾分の隔たりがあろう。

はかつて、短い期間、プロのオーケストラでチェロ奏者として活動したことがある。そのころ私は若くて、指もよく回り、何でも弾けるような錯覚に陥っていた。ある日、20世紀のチェロの巨匠と云われるピエール・フルニエ先生のマスター・クラスを受講する機会に恵まれた。私は恐ろしげもなく、バッハの無伴奏チェロ組曲1番をみてもらった。「君のバッハからは、和音が聞こえてこない」「ソルフェージュだよ・・・。音符は、考えれば考えるほど演奏しやすくなるのだよ。」と、フルニエ先生。当時、旋律のようにしかとらえられていなかった私の無伴奏チェロ組曲の理解は、その後、ヨーロッパでの和音の響きを体験することによって、大きく生まれ変わることができた。フルニエ先生の、あの優しいトーンの「ソルフェージュ・・・」という声が、今でも私の耳の中で繰り返し聞こえてくる。

ーロッパの伝統のあるコンサートホールで演奏会を開く。私が若い頃には想像もしなかったことが、実際にできるようになった。私は、若い人たちに、否、若い人だけでなく音楽を演奏する全ての人たちに、こうした体験をしてほしいと願う。ヨーロッパのホールで演奏することは、その伝統の懐にいだかれて、音楽を教えてもらえるような気がする。

かし、ここで、根本的な思い違いをしてはいけない。「お金さえ出せば、日本国内と同じような感覚で、ホールを借りることができ、演奏会も開ける」と、思ってもらっては大いに迷惑である。弊社の目的とするところは、あくまでも、「音楽を愛する日本人のために、本場で本物の音楽文化の根底を感じてもらい、これからの音楽活動に生かしてほしい」と願うからに他ならない。弊社のスタッフが、現地の協力スタッフとともにコンサートの準備を行う際には、現地政府機関・国際交流協会・地方観光局などの公的機関の協力や、現地一流楽団の演奏家たちの個人的な協力も得て、まさに多くの人たちの善意と協力によって成り立っていることを忘れてはならない。

かに、弊社が行う演奏会には、いつも多くの聴衆がホールを埋めてくれる。見も知らない日本の演奏団体なのにである。これは、現地で、弊社のコンサートに協力してくれるさまざまな人たち、即ち、政府機関・国際交流協会・地方観光局などの公的機関の方々や、現地の指揮者や演奏家たちが、個人個人の人のつながりをもって、多くの人に声をかけ、演奏会場に足を運んでもらえるよう努力してくれているお陰に他ならない。

は、音楽に対する深い愛情と感謝の気持ちを込めて、皆さんに海外での演奏会の開催をお勧めしたい。



 


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