●ひこね第九ドイツベルリン公演●

ミレニアムコンサート



 自由ベルリン放送局ホールはまあまあの入りで、そこでは果敢な第九がきかれた。この演奏のために100人をはるかに越える音楽家がはるばる日本からやって来た。そのこと自体は普通ならとりたてて言うほどのことでもなかろう。ところが、楽団員も合唱団員も、全員が音楽のほかにたとえばプログラマーなど「本業」に従事しており、ベルリンで大晦日にベートーヴェンを演奏できる楽しみを得るために一人あたり約6千マルクを支払ったのである。音楽的成果は、アマチュアオーケストラとしては思いがけないものとなった。おめでとう。

京都からほど遠くない小都市、彦根のオーケストラと合唱団はまだ若い音楽集団である。ベートーヴェンの第九を演奏するために集まったのは1998年になってからのことであった。彦根が元来一番の売りものとしているのは、一見の価値がある将車の居城と豊かな自然である。それだけではなく、彦根市民には音楽を、しかもよい音楽を、演奏する時間がたっぶりとれ、意欲も大変なものであると見える。ただし、オーケストラでは、弦楽器奏者のほうが管よりもよく鍛えられているようだ。

指揮者こは、タクポ・ユウイチ(1957年生まれ)が立ち、まずアクタガワ・ヤスシ作曲の、ロシア近代音楽に影響を受けた、オーケストラのための祝祭的小品を演奏した。ベートーヴェンになって、タクポは速めの歩調に切り替えた。急速な天地創造というわけだ。これは第一・第二楽章では多大な効果をあげたが、その後演奏者の集中力はやや落ちた。しかしシラーの「歓喜に寄す」で、すへての人間の心臓の鼓動がまた速まるのは皆さん御存知のとおり。陽気な彦根合唱団に、ベルリン・オラトリオ合唱団、バッハ合唱団、国立歌劇場合唱団の団員が混じっていたので、なおさらのこと。

独唱では、彦根出身のタジマ・シゲヨが明るい声を響かせていたが中でも圧巻はウクライナのバス、ユリ・ツイノヴェンコだった。

(Berliner Morgenpost 紙 2000年1月2日付)


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